| 象と雨 (ブッシュマンの古いお話から) Presented by Yumiko san |
昔、自然界で偉大な力を持っていたのは、象と雨の精でした。ご存知の通り象は、傲慢で威張っていますので、自分の力が上だと説き伏せようとして、雨の精といつも言い争いばかりしていました。 ある日、いつものように言い争っていると雨の精は、そぼ降る雨を思わせるようなしわがれた声で、こう言いました。「象よ、おまえはなぜ自分が私よりも勝っていると思うのか。私はおまえを養っているではないか。」傲慢な象は、雨の精の言うことを素直に聞くことはできませんでした。それどころかよく考えもしないで、こう言いました。「おまえが私を養っている?食べ物ぐらい自分で見つけられるさ。僕にできないことなんかないのさ。」このときばかりは、雨の精もかんかんに怒ってしまい、これ以上言い争ってもしょうがないので、見せしめにでることにしました。そして空を灰色に変え、雷のような声でこう言いました。「私が姿を消しても、おまえは生きていけるのだな?」。そう言うと姿を消したのでした。雨の精が姿を消すと、象は大声を出して笑い、こうつぶやきました。「世界は俺の物だ。あいつは逃げ出して、自分の負けを認めたんだ!」 何ヶ月もの間、象は野原や森を制し、いつものように、時が過ぎていきました。それどころか、象と雨の精が言い争うことがなくなったので、とても平和な日々が続いていました。そして、雨季がやってきました。たくさんの動物たちには、赤ちゃんが生まれようとしていました。そして、皆、緑が芽吹くのを、きれいな水が川を流れてくるのを心待ちにしていたのです。 でも、おわかりのように、雨の精は姿を消してしまったのです。だから空は、暑い太陽と真っ青な空のままです。何週間も、雲すら現れません。動物たちは、自分たちの赤ちゃんがおなかをすかしているので、心配になってきました。 暗い気持ちで、動物たちは象を探しに出かけました。だって、象は何でもできる神様のような存在なのですから。象は困った顔をしましたが、こう言いました。「コンドルを呼ぼう。コンドルは雨乞いができるから。」象はコンドルを呼んで、雨を降らすよう命令しました。でもコンドルは、雨の精に仕える身でした。そして雨の精と象が言い争ったことを知っていたのでした。だからコンドルは、「失敗したら何をされるか分からないので、怖くて雨乞いができない。」と言って命令を断りました。 次に象は、鳥の中でもっとも頭がよいカラスを呼び、雨乞いをするよう命令しました。カラスは命令に従い、雨が少し降りました。でも降った雨で、水溜りがいくつかできたぐらいでしたので、深い水溜り以外はすぐに乾ききってしまいました。 しかも象は最後に残った水溜りを独り占めにし、自分が食物を探しに出ているときは(食べ物を見つけるのはますます難しくなってきていました)、カメに水溜りを守るよう命令していました。カメは水溜りのところに腰を落ち着け、水溜りを守っていました。 そこへ、キリンの一群がやってきました。キリン達は一日中水を捜し求めてどこにも見つけることができなかったので、カメに水を飲ませてくれないかと頼みました。しかし、カメは「この水溜りは、世界の支配者、象様が所有しているものだ。」と言って断りました。シマウマ、ゲムスボック、ウイルビースト、ツエツエビー、スプリングボックなどあらゆる動物達が水を求めてやってきましたが、皆断られました。そして、「私達はこれからどうなるのだろうか。」と、その場を立ち去った動物達は不安な気持ちをささやき合っていました。 夕方になるとライオンがやって来ました。カメはこれまでのように、「これは象様が所有するものだ。」と言って断ろうとしましたが、ライオンは動じませんでした。ライオンはひょいとカメを押しのけると、水を飲みだしたのです。かわいそうなカメはどうすることもできませんでした。でも、自分自身も他の動物達同様、のどが渇いてしょうがなかったので、ライオンと一緒に水を飲み始めたのです。そしてライオンとカメはお互い水溜りを囲んで、そこにある水を飲み干してしまったのです。 象が戻ってくると、水溜りに水はなく、残っていたのは泥の塊だけでした。怒った象は大きな声をあげ、カメにくってかかりました。かわいそうなカメは「私は小さくて力もないので、のどが渇いている動物達を止めることができなかったのです。」と言って説明しようとしましたが、象は頭に来ていたのでカメを掴むと、丸ごと飲み込んでしまったのです。 でもカメは生き残ろうとしました。だって、こんな仕打ちをうけるようなことは何もしていないのですから。カメは、象の胃の中に入るや否や、象の体から逃げ出すべく、象の胃の壁にかぶりついたのです。象は傷みで大声を挙げました。そして気が付いたのです。自分がこんなに苦しんでいるのは、プライドと傲慢さが成せる技だったのだと。カメがやっとこさ象の体の中から出てきた頃には、象は死んでいました。カメは慌てて逃げ、それ以来他の動物のいうことを聞かなくなりました。自分のことは自分で決め、どこでも好きなところに行くようになったのです。 雨の精はこの悲しい出来事が全ての動物達の戒めになったと分かると、乾いた地上を哀れみ、たくさんの雨を降らしたのでした。そして全ての川、水溜りには水が戻ってきたのでした。 |
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